2016年08月30日
都立国際高校の国際バカロレアコースの分析しました。IBコースの教育理念や難易度、偏差値、過去問もインターナショナルスクールタイムズとして分析。気になる学費や進路先などもまとめました。
国際バカロレアのディプロマ課程(DP)は、高校2年から2年間、学びます。
そのため、高校1年生では、探究型・双方向型の授業を通して、DPの学びに必要な能力を高めます。
国際バカロレアのディプロマ資格試験は、11月に受験します。
合否を含めた結果は、翌年の1月に発表されます。
ちなみに国際バカロレアは、6月と11月の年に2回、ディプロマ資格試験が実施されています。
6月受験の場合、合否は7月。11月受験の場合は、翌年の1月に発表されます。
主に9月始まりの欧米の学校は6月に受験し、日本やオセアニアの学校など(一部を除く)4月始まりの学校は、11月にディプロマ資格試験を受験するケースが多いようです。
グループ1 (母語とする言語と文学)
English A Lanuage & Literature・英語と文学 (基礎/応用)
Japanese A Literature・日本語と文学 (基礎/応用)
グループ2 (第二言語と文学)
English B・英語と文学(基礎/応用)
Japanese B・日本語と文学 (基礎)
Japanese B ab inito(基礎)
グループ3 (歴史・経済・地理系)
History・歴史(基礎/応用)
Economics・経済 (基礎/応用)
Geography・地理 (基礎/応用)
グループ4 (自然科学系)
Physics・物理 (基礎/応用)
Chemistry・化学 (基礎/応用)
Biology・生物 (基礎/応用)
グループ5 (数学系)
Mathematics・数学 (基礎/応用)
グループ6 (芸術・アート・音楽・ダンスなど)
Elective (基礎/応用)
保健・体育や家庭科、総合的な学習、ホームルームなどは、日本語で行われます。
しかし、グループ1から6の科目群は、すべて英語。
IBコースで学ぶためには、かなりの英語力が必要です。
「世界で使える大学志願資格」国際バカロレア(International Baccalaureate)とは、世界中を転勤する家庭の子どもが、大学に進学できるように国際的に認められる大学志願資格を作ろう!という動きから生まれました。世界的な転勤族の子どもの教育を考えて生まれたと考えるとわかりやすいですね。
国際社会の様々な場面において英語で諸外国の人々と議論し、リーダーとして活躍できる生徒の育成を目指しています。
・国際バカロレアコースを志望する明確な目標を有し、国際社会への貢献を念頭において、海外大学進学に挑戦する強い意志がある生徒
・国際バカロレアコースでの学びに対して、自らすすんで学ぶ意欲と探究心を有し、困難な課題にも勇気をもって取り組む生徒
・協調性や相手を思いやる心をもち、他者との意見や考えの違いを積極的に理解しようとするなど、豊かな人間性を有する生徒
・幅広い視野を身に付けようとする意識や心身をきたえようとする意欲をもち、学校内外の活動に自主的・積極的に取り組んでいる生徒
・全ての教科の学習成績が良好で、英検2級から準1級程度に相当する英語の力を有する生徒
同校は、IBコースに次のような生徒をもとめています。
なぜ、国際バカロレアコースで学びたいのか?が明確で、海外の大学に進学希望で、将来国際社会に貢献することを考えていること。
協調性と思いやる気持ちがあり、積極的に理解していくメンタルと課外授業などリーダーシップを発揮できること。
全教科で良い成績を取り、英語力があること。
国際バカロレアのディプロマ課程ではひとつの教科も落とせません。
不得意科目がある場合、ディプロマ資格の足を引っ張り、取得できないケースがあります。
また、3つの要件ではCASなど課外活動で積極的に社会に奉仕し、問題解決型の力があることを証明する必要があります。
そのため、生徒像も「国際バカロレアで学べる生徒」を掲げているのです。
都立国際高校は、英語で国際バカロレアを学びます。
では、どのくらいの英語力が必要でしょうか?
東京都教育委員会は、英語力について次のように答えています。
都内の中学生に教育委員会が配布したパンフには、英語の能力が英検2級から準1級
パンフレットには、そう書いているようですが、実際に学んでいる生徒は、かなり英語力がないと学べないのではないか、と考えられています。
高校2年生からのディプロマ課程は、イベスティゲーションと呼ばれる課題レポートを出す必要があります。
英語で毎回レポートを提出するため、書く力もほぼネイティブレベルの英語力が必要だと考えられます。
入学から3年後の卒業時には、3,000語にもおよぶ小論文を英語で提出する必要があります。
語彙力、小論文の書き方などを含め、かなりの英語力で必要だと考えられます。
都立国際高校のIBコースの難易度はどのくらいでしょうか?
IB受験時の偏差値
70(東京都偏差値ランキングより)
平成27年のデータです。
【募集人員】
日本人生徒 15名
外国人生徒 5名
【応募者】
日本人生徒 66名
外国人生徒 22名
【合格】
日本人生徒 16名(男7:女9)
外国人生徒 4名(男0:女4)
合格者のうち約60%が女子生徒です。
この数字は、偶然かもしれませんが、国際バカロレア機構のディプロマ資格試験の合格者の男女比とほぼ同じです。
都立国際高等学校のIBコースの難易度ですが、偏差値では測れない部分があります。
英語運用能力検査のスピーキング、小論文や集団討論など独自試験であり、他の都立高校と採点基準が大幅に違うため。
偏差値で同校への志願を考えないようが良いでしょう。
まずはIBの教育理念と同校の理念。
説明会などに出席し、どのように学ぶか、を知る必要があります。
公開されている試験問題もヒントのひとつ。
試験問題を見てみましょう。
現在のところ学力面と性格面から試験を実施しています。
【学力面】
・英語運用能力検査
・学力検査(数学)
・小論文
【性格面】
・個人面接
・集団討論
公開されている試験問題などから都立国際高校の傾向を国際バカロレアの教育とからめながら分析してみます。
英語運用能力検査は、4技能を測定します。
筆記試験[60分](リスニング、リーディング、ライティング)
面接試験[10分](スピーキング)
サンプル問題を抜粋してみます。
ライティングのテストです。
東京都教育委員会の英語運用能力検査の検査内容のホームページからの引用です。
Which would be better, to live in an urban area or a rural area?
Write your answer on the answer sheet. Write as much as you think is necessary to adequately express your opinion.
質問自体は、たった一行。
「都会または田舎に住むのは、どちらが良いですか?」
自分の体験と知識から自分の主張を明確に答えなさい、とあります。
サンプル問題の答えも公開されています。
I think that living in an urban area is better. For me, I am lucky to have grown up in a small town, but I moved to the city when I was a junior high school student. Since I have lived in both the country and city, I think it is better to live in the city. Life in the city has much more diversity and many more stimulating activities. My life is more exciting in the city.
In my experience, however, living in a rural area was very relaxing. I can enjoy nature more, such as parks or fields, in the country. The people are more friendly and kind. The city can be too busy and sometimes makes me tired.
Both living in the city or the country has advantages and disadvantages, but, for me, urban life is more appealing than rural life. So, I think that life in the city is better. (154 words)
単語自体は、中学3年生の文科省の学習指導要領に出てくる英語の単語の範囲で答えています。
模範解答でも、最初に自分の主張で「都会に住むことが良い」と答えています。
このエッセイの書き方。
すなわち、結論から根拠を説明していく手法は、エッセイの書き方。エッセイの構造として身につけている必要があります。
使う単語は難しくなのですが、この質問に約20分程度で答えると考えると、エッセイの書き方など普段から英文のエッセイを書きなれている生徒が明らかに有利です。
50分で問題が4つ。
設題は、申請時によって日本語・英語から選べます。
詳しくは、公式問題を参考にしてください。
http://www.kokusai-h.metro.tokyo.jp/HPmaster/ib/exam/dl/2016_mathquestion.pdf
日本のエネルギー生産に関する課題を挙げなさい。
再生可能エネルギーに関する資料です。再生可能エネルギーとは,太陽光や風
力,水力など,自然の力で作るエネルギーのことです。 今後日本は特にどの再生可能エネルギーを,どのように開発するべきだと思いますか。資料3から
1 つを選び,あなたの意見を資料3,資料4を用いて,理由とともに述べなさい。
提供されたデータから自分の意見となる証明が必要な小論文です。
「自分の意見」を「客観的なデータ」を用い、自分の意見だけではなく「今後日本は特にどの再生可能エネルギーを,どのように開発するべき」と社会への提言としてまとめます。
この小論文は、問題解決能力の下地を測定する設題です。
ディプロマ課程で提出するエクステンド・エッセイのサンプル問題が国際バカロレア機構から出ています。
あくまでサンプルですが、下記のようなことを問題解決型として小論文にまとめます。
“What level of data compression in music files is acceptable to the human ear?”
(人間が聞き取れる範囲で、音楽のデータをどのレベルまで、圧縮できるか?)
“The effects of sugar-free chewing gum on the pH of saliva in the mouth after a meal.”
(食後にシュガーフリーのガムを噛むことは、唾液の酸性・アルカリ性にどのような影響を及ぼすか?)
エクステンド・エッセイでは、自分で根拠となるデータを世界から集め、分析し、仮設を導きまます。
中学3年生を対象とした設題のため、入学試験時は、根拠となるデータがすでに設題でまとめられています
設題にあるデータを比較・分析し、自分の仮設を導き出す力を測っています。
「日本の容器包装リサイクルについて、できる提言」
Students’ Perspectives on Japan’s Container and Package Recycling
集団討論では、提言や方法をまとめていきます。
自分の意見を主張するだけではなく、相手の意見を聞き、それを「合理的に批判」していく力を測定しています。
異なる意見をまとめ上げるリーダーシップ。相手の意見を根拠を指摘しながら、批判し、それを提言としてまとめていく力。
新しい視点や解決方法を取り入れていない提言は、すでに知っている解決方法のため提言といえません。
提言として、エポックメイキングな問題解決方法の提案。
そして、そこに導きだせる思考方法などが問われています。
都立国際のIBコースの試験は、3つのフェーズから志願者を分析しています。
【学力面】
英語運用能力検査、学力検査(数学)、小論文
【性格面】
個人面接、集団討論
【過去の実績】
調査書
この試験から何が読み取れるか。
インターナショナルスクールタイムズとして、ねらいを分析してみます。
都立国際高校のIBコースの試験などを確認して、インターナショナルスクールタイムズとして実感すること。
それは、都立国際高校が「国際バカロレアで学べる力がある」生徒を選抜しようとしていること。
国際バカロレアは、探究的な学びであり、なおかつ国際バカロレア機構が打ち出す学習者像に合う人材に向かっていかなければいけません。
2年間に及ぶディプロマ課程。
途中で脱落せず、安定的に継続して学べるメンタル。
自分で考えていける探究的な思考。
世界で通用するリーダーシップと奉仕精神。
出されている課題も、国際バカロレアのディプロマ課程につながっています。
すべての元となっているのが、国際バカロレア機構が打ち出しているラーナープロファイルと呼ばれる学習者像。
国際バカロレアは、次の10を追求する人材を育てようとしています。
それが、ラーナープロファイルと呼ばれるもの。
・Inquirers 探究する人
・Knowledgeable 知識のある人
・Thinkers 考える人
・Communicators コミュニケーションができる人
・Principled 信念のある人
・Open-minded 心を開く人
・Caring 思いやりのある人
・Risk-takers 挑戦する人
・Balanced バランスのとれた人
・Reflective 振り返りができる人
都立国際も、国際バカロレア機構のラーナープロファイルに合致する生徒を選抜しようとしています。
ラーナープロファイルについては、国際バカロレア機構が公式動画にまとめています。
英語ですが、わかりやすいので、参考にしたいですね。
都立国際高校は、東京都が運営しています。
そのため、志願料や授業料も都立高校と同じです。
入学考査料 2,200円
都立高校の学費は118,800円です。
国際バカロレアは、インターナショナルスクールを中心に採用されてきました。
そのため、授業料も高額です。
東京都立のため都立国際高校のIBコースの授業料は、都立高校の学費と同じ118,800円です。
IBコースは、その他にディプロマ資格取得に係る費用がかかる予定です。
しかし、インターナショナルスクールなどを含め、世界でも例をみない授業料の水準です。
現在、IBコースの一期生が在学中です。
そのためIBコースの卒業生は出ていません。
しかし、IBコースの進学先として都立国際高校が方向として指摘しているのが、大きく下記の3つ。
・イギリス
・アメリカ
・日本
上記の3つの地域が主に考えられます。
現在、普通科の生徒は、東京大学をはじめ高い進学実績をだしています。
上智、慶應、青山など30名前後、毎年合格しています。
インターナショナルスクールタイムズとして、都立国際高校のポテンシャルを感じるのは、海外の大学への進学実績がすでにあるため。
詳しく、海外の大学への進学実績を分析していきましょう。
都立国際高校は、海外の進学実績がすでにあります。
インターナショナルスクールタイムズとして、同校に高いポテンシャルがあると考えている点があります。
それが、海外の大学へのバックアップ体制。
University College LondonのFace Bookページより
都立国際高校は、1学年240名。
そのうち、2015年度は、25名が海外の大学に合格しています。
2015年度より同校の統計に、その他の海外大という欄が増えました。
そのため純増と安易に判断はできませんが、25名の海外大学の合格者を出しています。
このなかで、トップレベルの大学に合格しています。(一部を抜粋)
イギリス
University College London,Kings College London
オーストラリア
The University of Melbourne,The University of Queensland
アメリカ
Michigan State University,University of Michigan,University of California, San Diego,State University of New York,
カナダ
McGill University
中国
清華,復旦,上海交通,北京大学
韓国
延世
台湾
国立陽明 ,台北医学
年度より大きく違いますが、外国籍の生徒および帰国生が3分の1いるため、海外の大学に進学実績があります。
IBのディプロマコースの生徒は、ディプロマ課程の見込み点で志願できるため、各国の大学志願制度にばらばらに合わせる必要がなくなります。
すなわち余分な試験対策が減り、ディプロマ課程に集中することができます。
入学時から「海外の大学に志願したい」という学生にとって、ディプロマ課程に全力で学ぶことで、結果的に選択肢が増える仕組みです。
IBコースの第一期生に期待がかかりますが、毎年継続的にIBコースから卒業生を海外に送り出すことが同校の使命ともいえます。
一期生の実績だけではなく、5年、10年期間で同校の卒業生の進学先と活躍に注目したいですね。
アイルランド人の父親、日本人の母親の間に生まれたホラン・千秋。
東京都立国際高等学校を経て、2011年3月に青山学院大学文学部英米文学科卒業。
大学時代、一年間オレゴン州立大学に留学し、舞台を専攻しています。
KREVA。東京都立国際高等学校を経て、慶應義塾大学環境情報学部(SFC)に進学。
在学中から音楽活動をしていました。
都立国際高校の説明会は、例年下記のスケジュールで開催されています。
・6月 授業公開週間
・7月 学校見学会
・10月 学校説明会
・11月 第2回授業公開週間
・11月 第2回学校説明会
授業公開(前期・後期)…普段の授業の様子を見学できます。
学校見学会 …学校の施設見学をします。生徒が案内をする場合があります。
学校説明会 …施設見学だけでなく、次年度の入学試験情報なども知ることができます。
東京都立国際高等学校
〒153-0041 東京都目黒区駒場2-19-59
URL:http://www.kokusai-h.metro.tokyo.jp/HPmaster/index.htm
TEL:03-3468-6811
FAX:03-3466-0080
【インタビュー】国際バカロレアで満点。そのヒトとは? 岡庭晴さん
http://istimes.net/articles/707国際バカロレアのディプロマの試験は、45点満点。世界の平均点が約29点。その国際バカロレアで満点は、たった0.35パーセント。国際バカロレアの特徴は、全人教育です。すなわち成績だけではなく、人格としても国際バカロレアの採点基準で満点という評価をされた人物とは?
2020年にできるインターナショナルスクール・オブ・サイエンス高校が、面白そう!
http://istimes.net/articles/773神奈川県で、2020年に理科系科目の教育に重点を置く私立国際高校の設立を目指すプロジェクトがあります。それが、International School of Science設立プロジェクト。すでにサマースクールも開校し、設立に向けて準備が進んでいます。
この記事の記者
インターナショナルスクールタイムズの編集長として、執筆しながら国際教育評論家として、NHK、日本経済新聞やフジテレビ ホンマでっかTV、東洋経済、プレジデント、日本テレビ、TOKYO FMなど各メディアにコメント及びインタビューが掲載されています。
プリスクールの元経営者であり、都内の幼小中の教育課程のあるインターナショナルスクールの共同オーナーの一人です。
国際バカロレア候補校のインターナショナルスクールの共同オーナーのため国際バカロレアの教員向けPYPの研修を修了しています。
高校2年から学ぶ国際バカロレアのディプロマ課程の科目群です。
6科目とも英語で学ぶため、相当の英語力が必要です。
科目は、下記の6グループから1科目ずつ選びます。
応用レベルを3つ、基礎レベルを3つ。合計6科目を選びます。
なお、グループ6は、自分で選ぶ選択科目です。
*科目名とカッコ内は、編集部によるもの。